放課後の学校

 

聞こえるのは



二人の声と雨音だけ

 

 

 

 

  Share an umbrella with… 2

 

 

 

 

止みそうにない雨の音を聞きながら、二人は下駄箱で靴を履き替える。

重い灰色の空を見上げながら、は水玉模様の折り畳み傘を開いた。

その様子を見ながら、リョーマはゆっくり口を開く。

 

「あのさ・・・」

「?」

 

見ると、少し照れくさそうにしているリョーマの姿。

 

「どうしたの?」

 

は不思議そうに顔をのぞきこむ。

 

「・・・俺さ、今日、傘ないんだよね」

 

入れてくんない?との傘を指差しながら言うリョーマ。

 

折り畳み傘を開いたまま、は思わず固まる。

穴が開くほど見つめられて、リョーマは咳払いをひとつ。

ようやく我に返ったは、顔を赤くしてうなずいた。

 

(自分が言い出したことなのに・・・)

 

リョーマは苦笑するが、そんな恥ずかしがり屋なを可愛いと思うのも、また事実。

の小さく細い手が握る傘を、リョーマはスッと取り上げる。

 

「リョーマ君・・・?」

「これがしたかったんデショ?

 

リョーマは傘を左手に持ち、左側にいると自分との間に小さな屋根を作る。

がずーっとしたがっていた、相合傘。

は恥ずかしそうに小さくありがとう、とお礼を言うと、嬉しそうにリョーマに寄り添う。

水玉模様の相合傘をして、二人は家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

激しい雨が降っていた昨日と違い、今日は暑いくらいの日差しが降り注いでいる。

HRが始まる前の、二年八組の教室で。

は席につき、とおしゃべりをしていた。

 

「あちーな〜、今日は」

「あ、桃!おはよ〜」

 

教室に入ってきた桃城にが気づき、声をかける。

カバンを机の上に置くと、桃城はの隣の席に座った。

 

「昨日と大違いの天気だよな。昨日の夕方、すげー雨降ったんだぜ。おかげで練習が中止になってよ〜」

「そうなの?、昨日の放課後、越前リョーマ君待ってたんでしょ?平気だった?」

「うん。折りたたみ持ってたから」

 

昨日リョーマと相合傘をしたことを思い出し、はそっと微笑んだ。

 

傘持ってたのか!じゃあ越前は濡れて帰ったわけじゃないんだな」

 

そう言うと、桃城はふと不思議な顔をしてを見る。

 

「・・・??なぁに?」

「いや・・・そういや越前の奴・・・」

 

 

「昨日雨降ってたのに、なんで部室に傘置いていったんだ・・・?」

 

 

「え・・・・・・?」

 

 

――――――――今日、傘ないんだよね

入れてくんない?・・・そう照れくさそうに言うリョーマの顔が、の頭に浮かんだ。

 

 

「ちょっと、!?」

!?」

 

二人の呼ぶ声にかまわず、は教室を飛び出した。

HRが始まるまで、あと十分。

 

(まさかそんな・・・だって・・・)

(あんなに嫌がっていたのに・・・っ)

 

息を切らしてたどり着いたのは、一年二組の教室。

開きっぱなしの扉からそっと中をのぞくと、堀尾と話している(というより堀尾が一方的に話している)リョーマが見えた。

どうやって呼ぼうか迷っていると、ふとリョーマがに気付く。

からかう堀尾を適当にあしらって、リョーマは席をたち、のすぐ近くにやってきた。

周りの女の子に見せ付けるように、顔を近づけて。

 

「おはよ、

「うん、おはようリョーマ君・・・」

「・・・?どしたの?」

 

必死に言葉を探している

スーパールーキーの可愛い年上の彼女の登場に、今やクラス中の注目を集めている。

当の本人はまったく気付いてないようだ。

 

「ん・・・あのね・・・」

「ん?」

 

だが、もちろんリョーマは気付いていて。

ますます顔を近づける。

ヒッと息を呑む女の子の声が聞こえた。

 

「昨日・・・ほんとは傘持ってた・・・?」

 

どうやら予想外の言葉だったのか。

リョーマは少し驚いた顔をして、を見る。

 

「桃ちゃんが・・・リョーマ君部室に傘置いていったって・・・」

「(桃先輩・・・余計なことを・・・)」

 

じっと自分を見て答えを待つ

少し頬を染め、困ったような顔で自分を見ている。

 

「・・・別に・・・」

 

リョーマの口から出たのは、いつもと変わらない無愛想な言葉。

そんな無愛想な言葉にもかかわらず、は嬉しそうに微笑んだ。

 

 

どんなに無愛想で短い答えでも、その一言がすべてを物語っている。

 

 

「ありがとう、リョーマ君」

「・・・別にいいって」

 

照れたように頬をかくリョーマ。

顔をあげれば、十センチしか離れていない距離。

目を合わせて、お互いに少し微笑み合う。

 

HRを次げる鐘の音が、教室に響き渡った。

 

 

 

 

 

その日から。

雨の日には、水玉模様の相合傘が見られるようになったとか。

 

 

 

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結局、リョーマはさんに弱いんです