放課後の学校
聞こえるのは
二人の声と雨音だけ
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止みそうにない雨の音を聞きながら、二人は下駄箱で靴を履き替える。
重い灰色の空を見上げながら、は水玉模様の折り畳み傘を開いた。
その様子を見ながら、リョーマはゆっくり口を開く。
「あのさ・・・」
「?」
見ると、少し照れくさそうにしているリョーマの姿。
「どうしたの?」
は不思議そうに顔をのぞきこむ。
「・・・俺さ、今日、傘ないんだよね」
入れてくんない?との傘を指差しながら言うリョーマ。
折り畳み傘を開いたまま、は思わず固まる。
穴が開くほど見つめられて、リョーマは咳払いをひとつ。
ようやく我に返ったは、顔を赤くしてうなずいた。
(自分が言い出したことなのに・・・)
リョーマは苦笑するが、そんな恥ずかしがり屋なを可愛いと思うのも、また事実。
の小さく細い手が握る傘を、リョーマはスッと取り上げる。
「リョーマ君・・・?」
「これがしたかったんデショ?」
リョーマは傘を左手に持ち、左側にいると自分との間に小さな屋根を作る。
がずーっとしたがっていた、相合傘。
は恥ずかしそうに小さくありがとう、とお礼を言うと、嬉しそうにリョーマに寄り添う。
水玉模様の相合傘をして、二人は家へと向かった。
激しい雨が降っていた昨日と違い、今日は暑いくらいの日差しが降り注いでいる。
HRが始まる前の、二年八組の教室で。
は席につき、とおしゃべりをしていた。
「あちーな〜、今日は」
「あ、桃!おはよ〜」
教室に入ってきた桃城にが気づき、声をかける。
カバンを机の上に置くと、桃城はの隣の席に座った。
「昨日と大違いの天気だよな。昨日の夕方、すげー雨降ったんだぜ。おかげで練習が中止になってよ〜」
「そうなの?、昨日の放課後、越前リョーマ君待ってたんでしょ?平気だった?」
「うん。折りたたみ持ってたから」
昨日リョーマと相合傘をしたことを思い出し、はそっと微笑んだ。
「傘持ってたのか!じゃあ越前は濡れて帰ったわけじゃないんだな」
そう言うと、桃城はふと不思議な顔をしてを見る。
「・・・??なぁに?」
「いや・・・そういや越前の奴・・・」
「昨日雨降ってたのに、なんで部室に傘置いていったんだ・・・?」
「え・・・・・・?」
――――――――今日、傘ないんだよね
入れてくんない?・・・そう照れくさそうに言うリョーマの顔が、の頭に浮かんだ。
「ちょっと、!?」
「!?」
二人の呼ぶ声にかまわず、は教室を飛び出した。
HRが始まるまで、あと十分。
(まさかそんな・・・だって・・・)
(あんなに嫌がっていたのに・・・っ)
息を切らしてたどり着いたのは、一年二組の教室。
開きっぱなしの扉からそっと中をのぞくと、堀尾と話している(というより堀尾が一方的に話している)リョーマが見えた。
どうやって呼ぼうか迷っていると、ふとリョーマがに気付く。
からかう堀尾を適当にあしらって、リョーマは席をたち、のすぐ近くにやってきた。
周りの女の子に見せ付けるように、顔を近づけて。
「おはよ、」
「うん、おはようリョーマ君・・・」
「・・・?どしたの?」
必死に言葉を探している。
スーパールーキーの可愛い年上の彼女の登場に、今やクラス中の注目を集めている。
当の本人はまったく気付いてないようだ。
「ん・・・あのね・・・」
「ん?」
だが、もちろんリョーマは気付いていて。
ますます顔を近づける。
ヒッと息を呑む女の子の声が聞こえた。
「昨日・・・ほんとは傘持ってた・・・?」
どうやら予想外の言葉だったのか。
リョーマは少し驚いた顔をして、を見る。
「桃ちゃんが・・・リョーマ君部室に傘置いていったって・・・」
「(桃先輩・・・余計なことを・・・)」
じっと自分を見て答えを待つ。
少し頬を染め、困ったような顔で自分を見ている。
「・・・別に・・・」
リョーマの口から出たのは、いつもと変わらない無愛想な言葉。
そんな無愛想な言葉にもかかわらず、は嬉しそうに微笑んだ。
どんなに無愛想で短い答えでも、その一言がすべてを物語っている。
「ありがとう、リョーマ君」
「・・・別にいいって」
照れたように頬をかくリョーマ。
顔をあげれば、十センチしか離れていない距離。
目を合わせて、お互いに少し微笑み合う。
HRを次げる鐘の音が、教室に響き渡った。
その日から。
雨の日には、水玉模様の相合傘が見られるようになったとか。
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結局、リョーマはさんに弱いんです