本日

晴れ  のち  涙

 

明日は  晴れるかな

 

 

 

 

  第七話

 

 

 

 

結局、五時間目は屋上でサボり。



桃先輩と先輩が寝ている横で、俺も仰向けに寝転んで。

俺の隣で声を殺して泣く先輩の涙を、目をつむって見ないようにした。



泣くのを我慢して笑っていたのを見て、きっとこの人は、人前で涙を見せるのはイヤなんだろうと思ったから。

だから別に、お礼言われるほどのことじゃない。



そう言ったら、先輩はまた笑って泣いた。

 

よく笑って、よく泣く人だね。


でも俺、そーゆー人、嫌いじゃないよ。

 

 

 

 

 

 

 

行き当たりばったりでサボった五時間目は英語だった。

これなら別にノート書かなくても、教科書見なくても分かるから、運が良かった。


おまけに、今日は珍しく部活が休み。

いいとこあるじゃん、手塚部長。


今日、俺運いいかも。

 

さっさと教室を出て帰ろうと思ったけど。

少し考えて。



俺は桃先輩の教室へと向かった。



もし俺の思い通りになれば。

今日はかなりの強運だよ、俺。

 

 

 

 

まだHRやってるかと思ったら、とっくに終わっていて掃除も終了間際だ。

俺を見てヒソヒソ話している女の先輩がいたけど、軽く無視して。(だって知らないやつだし)

二年八組の教室の中を覗き込んだ。


下げた机を元の位置に戻している先輩と先輩。

後ろのほうで、窓の外を見ながら暇そうな桃先輩。

あきらかに、二人が終わるのを待っている。

 

ビンゴ!

 

そう思った瞬間、桃先輩が俺に気付く。

入ってこい、と手招きしている。


オジャマシマス、先生いないしね。

 

「よー越前」

「桃先輩、今日もニケツいいっスよね?」

「あー、いいけどよ。あいつらもいるぜ」

 

そう言って、目線を移す。

目線の先は、先輩と先輩。

 

「別にいいっスよ」

 

やっぱ今日の俺、強運だ。



先輩が、俺に気付いた。

少し照れたように笑って、ホウキを掃除用具入れにしまった。

掃除は終わったみたいだね。


他の生徒も、掃除が終わるとバラバラと帰り始めた。

先輩はあわただしくカバンの中身を整理している。



だけど、先輩は机に座って日誌を書き始めた。

黒板を見ると、今日の日直は先輩。

 

「あれ、まだ日誌書いてなかったの?」

「うん、忘れちゃってた」

 

・・・結構鈍感。

 

「時間かかるから先帰ってていいよー。は今日ピアノの習い事あるんでしょ?」

 

へぇ・・・ちょっと意外。

実はお嬢サマ?

性格はかなり激しいけど。

 

「あ〜ごめん!感謝するわ〜!」

「いーよいーよ。桃ちゃん、一緒に帰ってあげて」

「おーう。んじゃ越前、のこと頼むわ」

「うぃーっス」

 

きょとん、とする先輩に気付かず。

先輩と桃先輩は手を振って教室を出て行った。

 

たぶん先輩は、俺も桃先輩と一緒に帰るんだと思っていたんだろう。

まだよく分かっていない状態の先輩と目が合う。


瞬間、まじでラッキーって思った。

 

 

・・・・・・・・・・・・・なにがラッキー?

 

 

先輩と二人で帰ることが?

 

 

 

・・・まさかね。

 

今の俺、ちょっとどうかしてた。


俺もまだまだだね。

 

 

 

 

 

結局、俺たちが教室を出たのはあれから十五分後。


先輩、日誌書くの遅すぎ・・・。

あんなのテキトーに書けばいいのに。

変なトコで律儀だよね。

 

ふと視線を感じて左を見ると、先輩と目が合う。

昼休みのことを気にしているのか、照れたように笑って前を向く。

成り行きで俺と二人で帰ることになったけど、別に気にはしていない・・・よね。

 

「ごめんね」

 

とつぜん先輩が口を開いた。

 

「何がっスか?」

「・・・いろいろ。あ、日誌書くの待ってもらったりとか」

「・・・結構辛かったっス」

 

うっ、と言葉をつまらせる先輩。

 

「悪かったよ〜・・・ジュースおごってあげるよ」

「いや、いいっスよ」

 

まじで辛かったわけじゃないし。

 

「ううん。おごらせて。・・・今日のお礼」

 

日誌のお礼だけじゃなくて、と付け足すと、先輩は返事を聞かずに走り出して。

少し先の公園の中に入っていった。

 

ちょっと強引、と思いながらも。

不思議と嫌じゃない自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

赤い自動販売機の前で。

先輩は五百円玉を入れる。

 

「何がいい?」

「・・・・ファンタのグレープで」

「グレープね」

 

ボタンを押して、ガコン、と缶の落ちる音がした。

ファンタ好きなんだねーと言いながら、俺に手渡す。

 

「・・・ども」

「いーえ。え〜と、私は・・・」

 

自販機の前で少しにらめっこをして、ボタンを押す。

カフェラテのペットボトルのフタが、取り出し口から見えた。

 

ふと周りを見回す。

 

小さな公園には、犬の散歩をする人がポツポツいる。

 

乗り手のいないブランコ。

散らばっているベンチはがら空き。

 

 

気付いたら、二人でベンチに向かって歩き出していた。

 

 

 

 

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ちょっぴり仲良しになってきました。

お互いに打ち解けてきたかな・・・?