君の姿が
私を揺らす 時を止める
第六話
太陽の光が眩しくて。
一瞬目を細める。
まばたきをして目に映ったのは。
黒い髪を風になびかせている越前君の姿。
「「・・・・・・・・・・・・」」
昨日と同じように、黙ったまま見つめ合う。
私の身体は、扉を開けた体勢のまま。
右腕が重い・・・。
「・・・閉めたら?」
「・・・え?あ・・・うん・・・」
彼の一言で我に返り、私は慌てて扉を閉めた。
どうして越前君がここに・・・?
気付けば、たちはもうお昼を食べ終わっていて。
中身のないパンの袋に空っぽのお弁当箱、そしてペットボトルのジュースが、桃ちゃんの足元に転がっている。
・・・桃ちゃんが越前君も誘ったのかな。
と桃ちゃんは、寄り添って、というわけじゃないけど。
なんだかほほえましい寝顔で、二人は夢の中だ。
、不二先輩の本性聞けたのかな?
なんて考えていたら。
「・・・すわ・・・らないんすか?」
たどたどしい敬語に、私は思わずぷっとふきだす。
「・・・ひどいっスよ」
「ごめんごめん」
ふと彼を見れば。
開封されていないパンが二つ転がっていて。
「・・・?お昼食べないの?」
「・・・今から食うんで」
そう言って、ガサガサと袋を開ける。
ファンタを飲んで、「ぬるっ・・・」と呟いた。
もしかして・・・。
「待っててくれたの・・・?」
まさか、とは思いつつも。
心のどこかで、ちょっぴり期待して聞いている自分もいる。
「・・・別に」
彼らしい答え。
でも、否定はしていない。
嬉しくなって、思わず笑みをこぼした。
越前君が、少し驚いた顔をする。
「? どしたの?」
「いや・・・。俺に対しての笑った顔、初めて見たんで・・・」
あっ、そういえば・・・。
私、きっと越前君を見て、いつも恨めしげな顔ばっかりしていたんだろうな。
少し居心地が悪くなって、私は彼の隣に一人分間隔をあけて腰を下ろし、お弁当を広げた。
気持ちのいい風が吹く屋上で。
越前君と二人で、お昼を食べる。
なんだか変な感じ。
つい昨日まで、あんなに苦手意識を持っていたのにな。
安心してる、ってわけじゃないけど。
明らかに、気持ちは前よりも穏やかで。
なんでだろう。
彼の雰囲気がそうさせているのかな。
こんな無愛想なのに・・・って言ったらヒドイけど。
私の、彼に対する意識が変わったのかな・・・?
だけどやっぱり、特に言葉を交わすこともなく。
そうやって、のんびりゆっくりお昼を食べていたら。
耳に響く、チャイムの音。
「あっ・・・!授業始まっちゃう!」
私は慌てて、食べかけのお弁当のフタを閉める。
だけど、越前君はまだ余裕でファンタを飲んでいて。
「授業始まっちゃうよ。行こ?たちも起こさなきゃ」
彼は私をチラリと見ると。
「いやっス」
と、一言。
「いやじゃないでしょー。ちゃんと授業でなきゃダメだよ!」
「それじゃあ、先輩はちゃんと出てるんスか?」
ズキッと胸が痛んだ。
ついさっきの先生の言葉を思い出して、私は返答につまる。
「・・・・・から、聞いた・・・?」
「・・・・・・・・・・」
何も言わない。
無言は、肯定だよね。
「情けないね、私・・・」
「・・・嫌いなら、しょーがないんじゃないんすか?」
「ううん、嫌いじゃないの」
即答した私を、越前君が驚いて見る。
「美術は嫌いじゃないよ。むしろ好きなほう。いつも描きたいと思ってるくらい」
「・・・・・・・」
「じゃあなんで欠席するのかって?・・・・・内緒!」
「・・・・・別に知りたくないっスよ」
「え〜顔にかいてあるよ?気になる!って」
あはは、と楽しそうに笑ってみせる。
笑いたいわけじゃない。
笑わなくちゃ、涙が出そうだから。
私の笑い声が、空に吸い込まれる。
突然、ドサッと音がして。
隣を見れば、越前君が仰向けに寝転がっている。
「寝るの・・・?」
返事の代わりに、彼は目を閉じる。
私は越前君に、小さくありがとうと呟くと。
大きな青い空を仰いで、涙を流した。
それが自分に対する情けなさか、越前君のさり気ない優しさに対する涙かは分からないけれど。
空の下で流す涙は気持ちいい。
初めて、美術以外の授業をサボったよ。
たまには、こんな日もいいね。
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リョーマ、さんに言わないでっていわれたのにしっかり言っちゃってます(笑)
ちょっとは距離が近づいたかな?
次からだんだん仲良しになってくる・・・ハズ。