心のままに  今を生きる

そう答えたのは

 

俺自身が  そうやって駆け抜けてきたから

 

 

 

 

  第十四話

 

 

 

 

昼休み、今日もいつもの四人で、屋上で昼飯を食べる。

俺と、桃先輩と、先輩。


そして、先輩。

 

先輩と遊園地に行ってから、昼休みはたいていこのメンバーでこの場所だ。

別に嫌じゃない。

むしろ、このメンバーじゃなきゃ変な感じがするくらい。

 

 

空の弁当箱に中身のないパンの袋、汗をかいた缶ジュースが転がるそばで。

桃先輩と先輩が、気持ちよさそうに寝ているのもいつものこと。

で、俺がファンタを飲む横で、先輩がのんびり弁当を食べるのもいつものことだ。




最初の頃に比べたら、ずいぶん会話してるよ、俺たち。


そう思っていたら。

 

「リョーマ君って何が好き?」

「は?」

 

・・・時々よく分かんないこと言い出すけどね、先輩って。

 

「好きなもの、なに?」

「・・・全国名湯の入浴剤入りの風呂に入ること」

 

とりあえず「好きなこと」を言ってみる。

前も言った気するけど・・・。

 

「あ〜・・・そうじゃなくって・・・」

「焼き魚・茶わん蒸し・えびせんべい。えびせんべいは梅とキムチ味がいい」

 

これも前言ったけど、「好きな食べ物」を言ってみる。

 

「・・・・・・じゃなくて〜」

「FILA、科学、シルバー」

 

もうジャンル無視。

 

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・違うんスか?」

 

どうやら違うらしい。

 



「なんスか、いきなり」

 

少しぬるいファンタを口に含む。

 

「ん〜・・・・・あのね、お礼がしたいなって思って」

「なんのお礼っスか?」

 

残りのファンタを一気に飲み干して、地面に置く。

先輩が少し恥ずかしそうに目をそらした。

 

「絵・・・描けるようになったの。そのお礼」

 

 

ああ・・・そういうことね。

 

 

そういえば今日の三時間目、窓から見た先輩はスケッチブックを持っていた。

どうやらもう大丈夫みたいだね。

 

でも別に、俺は助言をしたわけじゃない。


思ったことを言っただけ。


俺の言葉は、きっかけに過ぎなかったんだ。

 

 

そう言うと、先輩は困ったように笑う。

 

「リョーマ君らしい」

「ども」

「でもお礼させて?」

「・・・・・」

 

先輩って変なとこで頑固だよね。

・・・ま、別にいいんだけど。

 

「いきなり言われても、思い浮かばないっスよ」

「じゃあ、思いついたら言ってね?」

「はいはい」

 

俺が答えると、先輩は満足したように弁当を食べ始める。

それにしても食うの遅いな・・・先輩。

 

 

空を見ると、雲ひとつない。

絶好のテニス日和。

 

「今日も見に来るんスよね?テニス」

「うん、そのつもり〜」

 

初夏の風が、先輩の髪を揺らした。

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

〜!コート行こう♪」

 

帰りのHRが終わり、準備完了のがさっそく私の席にやってきた。


桃ちゃんに「今日も見に行くよー」と言って、私もカバンに必要なものをつめる。

ポーチをカバンにいれて、席を立った時。

 

〜」

 

同じクラスの男の子に呼び止められる。

 

「なぁに?」

「お前アンケートのプリントだしてないだろ?」

 

机にあるプリントの束を数えながら、「のがないぞ」と言っている。

 

忘れてるんじゃない?あんた鈍いから」

「・・・・アンケートってなんのアンケートだっけ?」

「・・・・風紀委員のアンケート。先週配られたやつよ」

 

そういえば何か配られたかも・・・。



机の中身を全部だして調べると、少しクシャクシャになったA4サイズの紙が出てきた。

すっかり忘れていたため、当然解答欄はすべて白紙。

 

「やっぱりね〜。らしいわ」

、早く書いてくれよ」

 

二人からお小言を言われながら、私は泣く泣くシャーペンをとりだす。

学年に丸をして、以前、リョーマ君に日誌を書くのを待たせたときのことを、ふと思い出した。

 

、先にコート行ってて」

「いーって。すぐ終わるでしょ?」

「でもコートの周りすぐ埋まっちゃうから・・・ダッシュで書いてダッシュで行くよ」

 

後ろのほうで、爪先立ちでずーっと見ているのはつらいしね。

 

「んー・・・じゃぁ早く来なさいよ?場所取りしておくから」

「うん、ごめんね。お願いしまーす」

 

教室掃除をしている人たちの邪魔にならないように、教卓の上で書く。


ダッシュで書くって言っちゃったけど、結構質問数多いな・・・。

 

 

 

 

 

なかなか適当に書けないもので、ようやく最後の欄を書き終わったのは十五分たってから。

早くコート行かなくちゃ。

 

・・・と思ったら。

 

「おい、半分持ってくれよ。俺他のプリントも持ってかなくちゃいけないんだ。

風紀委員の俺をねぎらうってことでさ」


「えっ」


「え、じゃないだろ〜。出し忘れたの誰だ?」

「・・・・・・持ちマス」

 

これでさらに十分は遅れちゃう・・・に悪いことしちゃったな。

 

プリントの束を腕に抱え、カバンを持って教室をでる。

重いけど、時間短縮のためだから仕方ない。



前を歩く風紀委員クンの背中をプリントで押しながら、少し歩く速度を速めた。

 

 

早くコートに行きたい。



それしか考えていなくって。

 

 

 

あの大きな瞳の視線に、私はまったく気付いていなかった。

 

 

 

 

 

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雲行きが怪しい・・・? 

次もリョーマ視点から始まります