雨の遊園地

リョーマ君の腕の中

 

天気のいい日に行くよりも

 

深く  思い出に残る気がした

 

 

 

 

  第十二話

 

 

 

 

雨で濡れているはずなのに、リョーマ君の腕の中は凄くあったかい。

まるで、私の心のかたまりを溶かしてくれるようだった。



泣き疲れて顔をあげると、リョーマ君の申し訳なさそうな顔。





勝手に泣いたのは私なのに、彼は一言「ゴメン」って言った。

 

私に元気を出してもらいたくて、遊園地に誘ってくれたんだって。


それなのに泣いちゃったから・・・って。

 

 

 

ねぇ、リョーマ君。



ほんとにありがとう。

 

 

 

その気持ちだけで、私は十分元気になれるよ。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、!」

 

リョーマ君と遊園地に行った次の日。

校門前でを見つけて声をかける。

 

「おはよ〜。なーんかいい顔してるね?」

「え?そうかな??」

 

ニヤニヤしながら私を見るから、もしかしてリョーマ君と遊園地に行ったことがバレたのかな、と思った。

 

「うん、してるよ。なんて言うのかな・・・わだかまりがなくなった感じ?」

 

昨日たくさん泣いたからかな・・・。



あはは、と誤魔化して、二人で上履きに履き替える。

 

 

 

「おい越前!お前風邪大丈夫なのかよ」

 

ふと聞きなれた声が聞こえ、私とは顔を見合わせ、階段まで小走りで行く。


見ると、桃ちゃんとリョーマ君が踊り場で話していた。

 

「桃!越前リョーマ君!おはよー」

「おう、おはよっ」

 

が声をかけて、二人が振り向く。

リョーマ君と目が合うと、少しだけ笑ってくれた。

ちょっと照れくさいけど、私も小さく微笑み返す。

 

「珍しいな、お前が風邪引くなんてよ」

「なになに?なんの話〜?」

 

二人の会話にが割って入る。

 

「いや、昨日こいつ風邪ひいたってんで部活休んだんだよ。珍しいこともあるんだなー」

「俺だって風邪くらいひきますよ・・・」

 

そう言うリョーマ君の口もとは少し笑っている。

だけど、昨日雨に濡れちゃったから本当に風邪ひくところだったよね。

 

「もう風邪は大丈夫なの?リョーマ君」

「全快っスよ」

 

私もそれとなく会話に入る。

部活さぼったってバレちゃマズイもんね。

 

「そっか。よかったね〜」

「ども」

 

ニヤッっと私に笑いかけるリョーマ君。


その笑みの真意を知っている私は、こらえきれず笑い返した。

 

「お?なんだお前ら、いつの間にそんな仲良くなったんだよ?」

 

いぶかしげな顔で首をひねる桃ちゃん。

 

「あっれ〜?桃ったらジェラシー?」

「バッ・・・!ちげーよ!!」

 

からかうを追いかけて、桃ちゃんたちは階段を上っていく。



あとに残された私たちは。

 

 

「・・・昨日はありがとね」

「・・・いーえ」

 

やっぱり、お礼は言っておかなくちゃね。





HRを告げる鐘が鳴り、たくさんの生徒達が慌しく教室に戻っていく。

リョーマ君にバイバイを言って、私も慌てて階段を上った。

 

 

先輩!」

 

 

一番上まで上りきったところで、リョーマ君に呼ばれて。

 

「どうしたの?」


「・・・・・・」

 

後ろを向いて首をかしげても、なかなか言い出さない。


私から少し目線をはずして、ゆっくりとリョーマ君が口を開いた。

 

 

「昨日は楽しかったっス・・・・・・・・・ありがと」

 

 

恐らく、ありがとうなんて言葉は、滅多に言わないであろう。

それでも、彼の言葉はしっかりと私に伝わった。



なんだか凄く嬉しくなって、満面の笑みを彼に向ける。

 

 

「私からもありがとう!また行こうね!」

 

 

自分では全然気付かなかったけど。


ありがとうって言葉が、こんなに嬉しかったのは初めてだよ。

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

HRが始まるギリギリで入った、一年二組の教室。

席に座ると、後ろにいる堀尾がさっそく話しかけてきた。

 

「越前っ。なんかいいことあったのか?」

「別にないけど」

 

あったけどね。

 

「ほんとかよ?すげーいい顔してるぜ〜」

「いつもと変わんないし」

 

ま、顔は変わんないかもしんないけど、心は変わってる。




自分で言うのもなんだけど、今めちゃくちゃいい気分なんだよね。

朝イチで先輩の笑顔が見れたからかもしんない。

満面の笑顔でまた行こうねって言われたし。




やっぱ誘ってよかった。




先輩の本心も聞けたし、どうしてあんな目で俺を見ていたのかもようやく分かった。

 

たぶん、俺しか知らない先輩の心。

桃先輩はもちろん、一番仲がいい先輩だって知らないはずだ。

 

 

別に二人だけの秘密とか、そーゆーんじゃないけど。

 

 

 

それでも、俺の機嫌が今日一日崩れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

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遊園地の次の日のお話でした。