自分でも驚くほど
一点の曇りもない それは真っすぐな気持ち
For you! 4
「・・・・・どーゆーことっスか、これ」
「まぁ越前、座れって」
「おチビ〜そんだけで足りるの?」
「英二が食べすぎだと思うよ、僕は」
桃城行きつけのハンバーガーショップにて。
適当に注文して席を探していたら、あろうことか菊丸と不二がにこやかに手を振っていて。
気づかない振りをして二階席にでも行こうとしたら、あとからきた桃城に強制的に座らされた。
菊丸が、リョーマのトレイに乗っているポテトをつまみ食いする。
「ここで会うなんて偶然だにゃ〜」
「今日は部活来なかったんスねぇ、英二先輩達」
「うん、英二と寄り道。どうだった?今日の部活は」
ハンバーガーにかぶりつく桃城に、不二が笑って答えた。
三年である菊丸と不二は、すでに引退をしているがよく部活に顔をだしている。
もっともそれは、菊丸と不二の二人だけではないけれど。
「俺は絶好調っスよ!ま、越前がちょっと不調って感じっスかね」
「不調じゃないっス」
不機嫌そうに睨むリョーマに、菊丸は興味深そうに身を乗り出す。
「へぇ〜。おチビ、もしかしてちゃんと何かあったの?」
どうして、誰も彼もと関係があると思うんだ、と疑問を感じずにはいられない。
そんなに分かりやすいのだろうか。
「越前のヤツ、今日一緒に帰るのを断わられたんスよ!」
「!うっ・・・」
その言葉に驚き、リョーマはポテトを喉につまらせる。
不二に差し出されたジュースを慌てて飲み、息を整えて桃城を睨んだ。
そういえば、桃城はと同じクラスだということを思い出す。
気付かないうちに、盗み聞きでもされていたのだろう。
すぐに菊丸が食いついてきた。
「なになに?フラれちゃったの?かっわいそ〜おチビ!」
「そういや最近一緒に帰らねぇよな、お前ら」
(・・・人が気にしてることを・・・)
早くも帰りたくなってきたが、あいにくポテトはまだ半分以上残っている。
Mサイズを頼んだ自分を恨めしく思いながらも、リョーマは黙々と口に運んでいった。
と、今まで黙っていた不二が、思いついたように口を開いて。
「もしかしてさん、お菓子作りの練習とかしてたりして・・・・」
せわしなくポテトを口に運んでいたリョーマの手が、一瞬ピタリと止まる。
その隣で、桃城がリョーマを見てニヤリと笑った。
「え〜、それってバレンタインってやつ?不二ぃ」
「うん。もう一週間もないね」
不二が意味ありげに笑いかけたが、リョーマは関係ないというようにそっぽを向く。
その隣で桃城が、六個目のハンバーガーを食べながらニヤニヤしている。
「そういやのやつ、誰かさんがバレンタインに興味がなくて困ってるって言ってたぜ〜」
「・・・・・・・・・」
何も言わないリョーマに、不二は苦笑する。
菊丸が羨ましげな視線を投げかけた。
「結局ラブラブなんじゃん、おチビたち」
「しかも!英二先輩、のやつ料理苦手なのに手作りなんスよ!」
「も〜羨ましいぞっ、おチビ!!」
盛り上がる二人とは対照的に、リョーマはどこまでも無言で。
眉間にしわを寄せて、溜息とともに言葉を吐いた。
「・・・・ほんと、女ってバレンタインとか好きっスよね」
リョーマ以外の三人は顔を見合わせて。
桃城は苦笑いしながら、八つ目のハンバーガーの包みを開ける。
「おチビ〜そんな言い方ってないじゃん!」
「・・・・・」
不二が、少しだけ首をかしげた。
「越前は、さんからのチョコ、欲しくないの?」
「・・・別に」
「さん、きっと越前のために頑張って作ると思うなあ」
「そーだよおチビ!ちゃん、料理苦手だってゆーのにさ、わざわざ手作りなんてっ」
俺もそんな彼女ほし〜、と菊丸がコーラを飲む。
青春だね〜、と呟く桃城は、ハンバーガーを食べるペースが未だに落ちない。
そんな先輩二人を横目に、リョーマは再び口を開く。
「・・・男がチョコ欲しがるなんて、なんか、かっこ悪いっス」
ああ、と不二が少し微笑んだ。
「越前はアメリカにいたしね。やっぱり、そっちの感覚が染み込んでるんだろうね」
菊丸が大きな瞳をパチクリさせながら、ストローから口を離す。
「え、不二、アメリカのバレンタインってどんなのなの?」
「バレンタインに、女性が男性にチョコをあげるのは日本だけだよ。アメリカでは、男女問わずプレゼントを贈るみたい」
桃城が感心したように頷く。
気付けば、すでにハンバーガーを食べ終わったようだ。
トレイの上に積まれているのは、今やゴミとなった包み紙だけ。
「へぇ〜。じゃ、男子が女子にチョコ贈るってこともあるんだ!」
「チョコだけじゃなくて、花とか、カードとか。恋人同士が、お互いの気持ちを確かめ合う日でもあるみたいだね」
最後に何気なく付け足した、不二の言葉。
しゃべりすぎっス、とリョーマがポテトを食べながら控えめに言った。
菊丸がストローを指でつぶしながら、頬杖をつく。
「ふぅ〜ん。アメリカの男の人は大変だにゃ〜」
「アメリカ暮らしが長い越前にとって、日本のバレンタインは馴染めないのかもね」
「でもおチビっ。好きな人にチョコをあげたい、っていう女の子の心理も、理解してあげなくっちゃ〜!」
「・・・・・・」
黙ったままポテトを食べ続けるリョーマに、不二が少し厳しい声でたしなめる。
「理解できなくても、彼女からのチョコ、受け取らないなんてことしないよね」
菊丸と桃城が、自分をジッと見ているのが分かった。
バツが悪そうに、リョーマは頬をかいて。
「・・・そりゃ、しないっスよ」
呟くような言葉に、不二がニッコリ笑った。
「さんも頑張ってるんだから、ちゃんと受け止めてあげるんだよ」
分かってるっス、と答えたリョーマの表情は。
そっぽを向きながらも、まんざらでもなさそうだった。
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リョーマはプライド高いです。
お次はいよいよ当日です。